2009年05月10日

魔法使えず死を決意? 法廷で「失神」した被告の精神状態は…8人殺傷通り魔公判

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090510/trl0905101300000-n1.htm

 茨城県土浦市のJR荒川沖駅周辺で通行人ら8人が殺傷された事件で、 殺人罪などに問われた金川(かながわ)真大被告(25)の初公判は、被告が法廷で「失神」するアクシデントが起こる波乱の幕開けとなった。 弁護側は「完全責任能力がある」 とする鑑定結果や検察側の主張に反論。何らかの精神疾患がある金川被告が「この世では魔法が使えない。 ファンタジーの世界とは違うから死にたい」と考え、死刑になるため事件を起こした−。そんな前代未聞の主張を展開した。 カギを握る被告の精神状態をめぐって主張がぶつかり合った「第1ラウンド」。今後も予断を許さない展開になりそうだ。 (芦川雄大)

余裕の傍聴席確認から「一変」  顔面蒼白(そうはく)、けいれん

 

 「…額の傷は7〜8センチです。深さについては筋肉に達しているが、骨には達していません。数ミリ程度と思われます。 包丁で切られたものだと思います。『血まみれ』との記載があり、出血量は多かったと思われます…」

 1日に水戸地裁で開かれた金川被告の初公判。昼の休廷を終え、公判が再開されてから約1時間半がたった午後3時前。 201号法廷では、検察官が荒川沖駅の自由通路で顔を切られ、 軽傷を負った巡査の供述調書を読み上げていた。

 組んだ手をもぞもぞと慌ただしく動かす。目をぱちぱちさせる。右手の指で左の手のひらをはじく。伸ばした足を何度か組み替える−。

 被告は午後になって徐々に落ち着きがなくなってきた。その顔色が青白くなってきたかと思うと、突然、首から上がけいれんし、 首がガクッと折れて左側の刑務官にもたれかかった。

 被告の背後に座っていた2人の弁護人は、慌てて身を乗り出し、様子をうかがった。そして、「休廷をお願いします」 と慌ただしく鈴嶋晋一裁判長に告げた。

 左右の刑務官が脇を抱えて外に連れ出そうとするが、被告は両手両足を投げ出し、自力では立てなかった。4人の刑務官に支えられ、 青白い顔のまま引きずられるように退廷していった。

 「眠ってしまったのだろうか」

 「ショックを受けて、気を失ったのではないか」

 目の前で起きた不測の事態を受け、 傍聴していた報道各社の記者たちは戸惑いながらそれぞれの上司らに報告していた。

 この日、うすい灰色の上下のジャージーを着た丸刈りの被告が初めて法廷に入ったのは、 午前10時すぎだった。入廷の際に歩きながらほほをゆるめたり、目を細めて傍聴席を確認するようなしぐさもみられ、 落ち着いた様子だった。それが数時間にして急激な変化に見舞われたことになる。

 公判は約25分後に再開。法廷に入ってきた被告は、慎重にいすに腰を下ろしたものの、落ち着きを取り戻しているように見えた。 裁判長は被告の身にどんな異常が起きたのかについて触れなかったが、閉廷後に取材に応じた弁護人は「失神した」と説明した。

 金川被告に異常が起こったとき、法廷の左右の壁に設置されたモニター画面には、巡査の顔がアップになっており、 額を縫った生々しい傷跡が示されていた。

 1月の「江東マンション神隠し殺人事件」第2回公判では、東京地裁の法廷の大型モニターに遺体解体の「再現」映像が映し出された際、 遺族の女性が飛び出し、廊下で大声で泣き崩れた。

今回の光景はこのシーンを思い起こさせるが、「反応」したのは、傍聴席にいた10人以上の被害者や関係者ではなく、 切りつけた当事者とされる被告自身だったことになる。

 これは何を意味しているのか。

 

過去にも「原因不明の失神経験」…事件現場では異常なし

 

 くしくも法廷での「失神」は、金川被告の量刑を裁判所が決める上で、重要な判断材料となる可能性がある。

 公判では被告が、起訴状に書かれている2人殺害、3人に重傷、4人に軽傷を負わせたとする罪の内容を認めたため、 争点が責任能力に集約されたのだ。 責任能力とは 「犯行当時、自分の行動に責任を負えるような(精神)状態であったかどうか」ということ。裁判長も、 検察側と弁護側の冒頭陳述の読み上げが終わった際に、「精神病罹患 (りかん)していたかが争点」と明言している。

 弁護人は、被告の犯行時の精神状態が、罪を問うことができない「心神喪失」 か、罪が軽くなる対象となる「心神耗弱」 だったと主張。そして、その根拠の一つに、「原因不明の失神経験がある」ことを挙げている。その主張は、被告が「失神」 する直前に法廷で読み上げられており、当然ながら被告自身も聞いていた。

 失神経験とはどんなものなのか。弁護人によれば、具体的には、 高校の生物の授業で血液の話を聞いたとき▽テレビの戦争映画で流血シーンを見たとき▽起訴前の血液検査のとき−に失神したり、 しそうになったりしたという。

 被告の突然の変化が失神だったとすれば、その言葉を裏付ける「原因不明の失神」が法廷で起こり、弁護側の主張が“補強” されたことになる。

一方で、8人が次々と殺傷された荒川沖駅の事件では、 犯行現場にかなりの血が流れ、被告自身も返り血を浴びた。だが、失神などの変調はなかったとされている。

 この“矛盾”について弁護人は、「(犯行時に失神しなかった)原因は一切明らかになっていない」(冒頭陳述)と説明するにとどめた。

 

驚きのファンタジー思想「高校卒業までに魔法を…」

 

 金川被告は人との接触を拒み、事件直前の約6年間、ほとんど会話のない引きこもりの生活だったとされ、 法廷で明かされた被告の事件前後の行動や日常生活はかなり「独特」だった。弁護側はその内容についても、 被告に精神疾患がある根拠とした。

 まず弁護側は、被告が自分の携帯電話同士で奇妙なメールをやり取りする行動があったことを述べた。

 《この宇宙が誕生した瞬間から、私の運命はこうなると決まっていたのだ》

 《私が正義だ!》

 また、映画「オズの魔法使い」 に出てくる「O」と「Z」を合わせたマークを1件目の事件現場か遺体に残そうとしたという。結局は実行しなかったが、 その代わりに自室の壁に「死」という文字とともに、そのマークをポスターカラーで書いていたことなどを説明した。

 被告は、弁護人がメールの内容を読み上げている間、笑うような表情を見せていた。

 さらに異様だったのは、弁護側が指摘した次のような内容だ。

 「被告は『ファンタジー(空想、幻想)思想』に支配されていた」

 「高校を卒業するまでに魔法が使えるようにならず、ファンタジーの世界ではないと考えて死のうと思った」

 その思想が事件の引き金になった理由は、「人を殺害し、死刑になって死ねば、ファンタジーの世界に行き着く可能性もあると考えた」。

こうした「稚拙な妄想」は、事件の残虐さとのギャップがあまりに大きい。被告が事件現場に残そうとした「オズの魔法使い」 のマークの意味については、いまのところ明らかになっていない。だが、やはりファンタジー思想の一環だったのだろうか。

 「自殺は痛いから選ばなかったにすぎない」「死刑は極刑ではなく、唯一の救いであり、ご褒美だった」 と弁護人がさらに主張を補足すると、傍聴席の被害者や関係者は一様に苦々しい表情を見せていた。

 

事件の背景に「父の定年退職」 ? 検察側が指摘

 

 一方の検察側も、「死刑になるために事件を起こした」としているところは同じだ。ただ、 金川被告が現実の世界を認識していたことを強調する内容になっている。

 「父親が定年退職すれば、 テレビゲームをする時間を削って働かなければならず、将来はさらにつまらなくなると考えた。定年退職が近づいた平成20年1月には自殺も考えたが、 痛い思いをするだけで死ねないかもしれないと思い自殺をあきらめた」

 「確実かつ苦しまず死ぬには死刑になるのが1番で、そのためには何人もの人間を殺害する必要があると考えた」

 起訴前に水戸地検が実施した精神鑑定では、 被告は自分を特別な存在と思いこむ「自己愛性人格障害」だが、「完全に責任能力がある」 とする診断結果が出ており、検察側は一般の被告と同じように裁かれるべきだとしている。

 だが、水戸地裁は初公判で弁護側の請求を認め、医師を替えて精神鑑定をもう1度実施することを決定した。 鑑定は公判と並行して行われ、結果は審理に影響を与えることになりそうだ。

 次回公判は14日で、書証調べなどの手続きが行われる予定となっている。

posted by DK at 15:39| Comment(0) | 話のタネ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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